2007年6月1日金曜日

首相の力、政治の力 2007.6.X

官僚王国解体論―日本の危機を救う法

小泉純一郎前首相が、2001年に内閣総理大臣に指名される5年前
1996年に出版した本のタイトルです。

官僚王国解体論

小泉政権の五年五ヶ月は、この本のタイトルそのままだな、と実感させられます。
官僚王国解体論のページをめくって、トピックを何個か拾い上げてみても
その後の小泉政権の動きにあまりに正確に反映されていて
首相の力、政治の力、というものを実感させられて
ある種の恐ろしささえ感じてしまいます。
以下、官僚王国解体論からトピック抜粋。

・官尊民卑から民尊官卑へ
・大きな政府から小さな政府へ
・官僚の既得権益の打破
・東京一極集中の解消
・郵政三事業の民営化による財政投融資の見直し
 それによる特殊法人改革、大蔵省の権力構造改革
・米百俵の精神
・国会議員の既得権「永年在職議員表彰」を辞退する

等々。

実現しませんでしたが、首都移転、首相公選、といったトピックもありました。

圧巻なのは、官僚王国解体論の154ページ

「郵政三事業の民営化は国民の支持がある。反対しているとむしろ時代に逆行していると
思われてしまう」と(多くの議員が)考え始めれば、政界のムードもクルッと変わり、
一気に民営化のタイムスケジュールが机上に乗ってくるだろう。

の一節です。
2005年の「郵政・ガリレオ解散」を、10年近く前の1996年に
予定していたかのような記述です。

読者の皆様もご承知の通り2005年の「郵政・ガリレオ解散」では、
小泉首相は、郵政民営化法案に反対した自民党議員を公認せず
各選挙区に郵政民営化に賛成の候補を、落下傘候補、刺客候補、くノ一候補、として
送り込み「小泉劇場」を演出し、自民党に歴史に残る大勝をもたらしました。

1996年出版の小泉純一郎著、官僚王国解体論、の154ページの抜粋を
もう一度記しておきます。

「郵政三事業の民営化は国民の支持がある。反対しているとむしろ時代に逆行していると
思われてしまう」と(多くの議員が)考え始めれば、政界のムードもクルッと変わり、
一気に民営化のタイムスケジュールが机上に乗ってくるだろう。

恐るべし、小泉純一郎。恐るべきは首相の力、政治の力です。

という訳で、首相の力、政治の力、というものを今更ながら実感した僕は
安倍晋三首相の著書、美しい国へ、を購入して読んでみたのであります。
大変売れているようで、僕が購入したものでも(2006年8月20日発行版)既に第五刷です。
いかに首相とはいえ、政治家の書いた本が出版一ヶ月で第五刷などという事が
ありえるのだろうか、と僕はまず思いました。
ヤングジャンプやヤングマガジンといった漫画がメインカルチャーで
小林よしのりさんの漫画でちょっと思想をかじったりすると浮いてしまう、という
90年代後半に学生時代を送った者としては、ちょっと不思議な感覚でしたが
時代が変わったのかもしれません。日本人の危機意識に火が着いたのかもしれません。

閑話休題。
まず、美しい国へ、というタイトルが意味深です。

・美しい日本の私――――川端康成
・あいまいな日本の私――大江健三郎

たぶん、安倍政権下では、日本はより保守化していくという事なのだと思います。
バカ朝日的な風潮も、より露骨になっていくのかもしれません。
美しい国へ、の内容に関しては、いろいろ思うところもありましたが、又、別の機会に。

先日、行き付けの本屋さんで麻生太郎外務大臣の著書
とてつもない日本、という本をみかけました。
とてつもない日本!
これまた凄いタイトルだ。
今月出版されたばかりのようですが、とてつもない日本。
とてつもなく売れそうだ!
美しくて品格があってとてつもない国、日本!

政治家の書いた本が商業出版される。
そういった風潮は、きっと悪い事ではないと思う。

といった訳で、1996年出版の小泉純一郎前首相の著書
官僚王国解体論―日本の危機を救う法、を読んで
改めて首相の力、政治の力、というものを実感した僕は
今月10日、仙台国際センターで開かれる
とてつもない日本、の著者、次期首相に最も近い男、外務大臣麻生太郎氏の
外交フォーラムに参加してくる事にしたのでありました。

とてつもない日本、を上梓されたばかりの麻生太郎外務大臣。
その、とてつもない外交フォーラム、に参加して思うところがありましたら
読者の皆様にも後日ご報告さし上げたいと思います。


―首相の力、政治の力(完)―




官僚王国解体論―日本の危機を救う法

美しい国へ (文春新書)

とてつもない日本 (新潮新書)

国鉄を再建する方法はこれしかない (世直しシリーズ (8))