2003年6月1日日曜日

長寿の秘訣 2003.6.X 初出

年間自殺三万人時代。
長生きしたければ交通事故より
自殺に気をつけなければならない時代となって
しまいました。
どうして日本で突出して自殺者が多いのだろう、と
問題提起される事があります。
何故だろう、と聞かれたら
日本人は大人しくて真面目だからだ、とか
ジュクジュクした梅雨のせいだとか
ハラキリの民族だからだ、という
曖昧な答えになってしまいます。

そういった中、先日瀬名秀明さん監修の
神に迫るサイエンス、という本を
読んでいて、そんな解釈もあるのか、と
感心したのです。
さすがに理系の人は割り切り方が違うな、と。

神に迫るサイエンス、の115ページで
山本大輔さんという方が指摘していたのですが
セロトニンというドーパミンと並ぶ重要な
神経伝達物質があるらしいのです。
セロトニンは心の安定に大きな役割を果たしている
神経伝達物質であるらしく、うつ病患者や
自殺未遂者の場合、セロトニンの量が極度に
減っているのだ、との事。

心の安定に大きな役割を果たすセロトニン。
そのセロトニンの出を良くするタンパク質を
セロトニントランスポーターと言うらしいです。

セロトニントランスポーターの
遺伝子にはS型とL型があるとの事。
遺伝子がS型の人はL型の人に比べて
セロトニントランスポーターの働きが
半分以下になる、と。
つまりS型遺伝子の人の方がL型遺伝子の人より
セロトニンの出が悪い。

簡単に言うと、S型遺伝子の人の方が
L型遺伝子の人よりもセラトニンの出が悪いので
心配性やうつ病になりやすいという事です。

で、ここからが重要なのですが
S型遺伝子(心配性型? )を
持つ人の割合は
日本人で98パーセント
アメリカでは68パーセントであるとの事。

それで僕は得心したのです。
日本人の98パーセントが
つまり日本人のほぼ100パーセントが
セロトニンの出が悪いS型遺伝子を持っている。
日本人というのは、生まれつき心配性でうつに
なりやすい繊細な民族なのだな、と。
だから日本では突出して自殺者が多いのか、とも。

僕はなんでもDNAで説明してしまう風潮には
懐疑的なのですが、現在の日本の閉塞状況の中で
自殺することなく長生きしていくためには
経済が悪い、政治が悪い、教育が悪い
あれが悪いこれが悪いと言って
ますますうつな気分を深めていくよりも
単に日本人である僕はセロトニンの出が悪いのだ
と割り切って、個人的にセロトニンの出を良くする
方法を探っていった方がよいような気がしてきました。


長寿の秘訣、セロトニン。


「神」に迫るサイエンス―BRAIN VALLEY研究序説 (角川文庫)