2004年1月10日土曜日

我が国とこの国(2)右脳と左脳 2004.1.X 初出

人間は、論理的な説得だけで動くかと言ったら
そうではありません。
感情・エモーションを刺激してくれる部分が
欲しいわけです。
論理・計算を司る左脳と
感情・直感を司る右脳を持つ存在として
当然のことだと思います。

僕は以前勤め先でクレーム処理の電話応対を
していた時にそれを学びました。
たいてい電話をかけてくるお客様の
クレーム・苦情の内容は支離滅裂です。

右脳の感情の機能が異常に高まってしまっているので
左脳の論理・計算能力が低下してしまって
いるわけです。

でも電話口で支離滅裂な事をわめき立てて怒っている
お客様も、10分、20分と経過すると
たいていトーンダウンしてきます。
怒りの感情を引き起こすのは
確かアドレナリンかノルアドレナリンだったような
気がしますが、おそらく人体は
怒りの感情を30分以上キープできないのでは
ないかと思ってしまいます。

僕が経験した最長のクレームは
2時間でしたが、最後はお客様との
世間話、になってしまいました。
現在、企業のクレーム処理部隊に回されて
ああ、いやだな、と思っている読者の方が
おりましたら、参考になればと思います。

クレームの電話がきたら、まず、最初の10分20分は
お客様の左脳の機能が低下されているので
何を言っても分からない状態です。
もしお客様が間違っていたとしても
ここでその間違いを指摘してはいけません。
ノルアドレナリンがさらに放出されて
まさに、火に油を注ぐ、状態になってしまいます。
とにかく最初の10分、20分は
とにかく申し訳なさそうな口調で
そうですね、そうですね、と相槌を打ちまくる事です。
すると、10分、20分、を経過した頃には
お客様の左脳の機能、つまり論理・計算能力が回復
してきます。
その段階に至ってから、当社のシステムは、と
説明を始めることです。

話が逸れてしまいましたが
こういった構図は、我が国、と、この国、の
問題と同じなのではないかと思うのです。

我が国は、と言ってもらえると
日本人としてのエスノセントリック(自民族中心主義)が
満足させられるので、右脳が刺激されて感情の機能が高ぶります。
でも、この国は、という主語を持ってこられると
何だか冷たい分析家のようで
右脳は活性化されません。
そうなると、日本は世界一素晴らしい国だ、と
思いたがっている人達は
お前が、この国、という時
あの国、はあるのか、と文句の一つも
言いたくなるわけです。

でも先述の、クレーム処理、の話と同じで
我が国、我が国、と連呼してエスノセントリックを
刺激して感情が高ぶっている状態では
この国、の問題点を正確に捉えることができません。

健全なナショナリズムは大切ですが
偏狭なナショナリズムに陥ると
見えるものが見えなくなります。
戦前の軍部の暴走を許したものはそれでしょう。

その国が偏狭なナショナリズムに陥っている時
この国は、という主語を持ってくる人は
非国民、のように扱われてしまいます。
僕は非国民歴が長いのでその辺はよく分かります。
そして日本社会では、これにプラスして
世間様、の圧力が加わります。

何で受験勉強しないの?
何でNBA選手になるなんて夢みたいなこと言ってるの?
何で東京のブランド大学に受かったのに
仙台の大学なんて行くの?
何で授業サボって体育館でバスケばかりしてるの?
何で教室の窓から教科書ぶん投げたりするの?
何で天気がいいのに傘さしてるの?
何でグランドで吼えてるの?
何でいつもバスケットボール持ち歩いてるの?
何で大学生なのに勉強なんかしてるの?
何で大学まで出たのにこんな仕事してるの?

僕はいやというほど、世間様、に苦しめられてきました。
中には僕が悪かった点もあるような気がしますが
その、世間様の常識、と言われるものも
10年20年のスパンで見れば
あっという間に、非常識、になるという事も
学んできました。
だから僕は、この国、と突き放して
書いてくれる人の方が信用できるような気がするのです。


-我が国とこの国(3)へ続く-

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