2007年1月1日月曜日

納豆狂想曲を見て、テレビ時代の終焉を思ふ 2007.1.X

そういう事だったのか、と、僕は思ったのでありました。

正月明けから、馴染みのスーパーで、納豆が連日品切れ。
値段も普段の1.5倍ほど。いったい何が起きているのか、と思っていたら
発掘! あるある大辞典2、というテレビ番組で
納豆がダイエットに効果ある、と放送されていたとの事であります。
それで納豆人気に火がつき、僕の馴染みのスーパーからも
納豆が姿を消してしまった。
納豆は安いし健康にもいい、と、僕は納豆常食派だったのですが
納豆が買えない! OH! NO!

と、この辺までは、みのもんたさんの番組(思いっきりテレビ? )で
健康にいいとされて取り上げられた食品が、番組放送直後から
スーパーで品薄になる、といったいつもの光景と構図は同じなのですが
今回の、納豆狂想曲、をもたらした、あるある大辞典2、が悪質なのは
以下の三点。
・番組内容自体が、演出、を超えた全くの、やらせ、捏造データの寄せ集めであった。
・納豆がダイエットや若返りに効果がある、という内容で番組が放送される事が
事前に納豆メーカーや大手流通業者に漏洩していた。
・大手スーパーのバイヤーさん達が、番組放送前に納豆を食品メーカーに
大量発注していて、番組放送直後から売りさばいて一儲けしていた。
悪質、という形容が相応しいのか分かりませんが、中々上手くできています。
パーフェクトなマスマーケティング術です。正月明けの、列島納豆狂想曲。

僕は今回の、納豆狂想曲、を、さして驚くことなく、むしろ感心して
見ていたのですが、それと云うのも、谷村智康さんの
CM化するニッポン(WEVE出版)という本に書いてある内容
そのままの構図だったからです。CM化するニッポン。非常にお勧めです。
(著者の谷村智康さんは、大手広告会社の雄、博○堂の元社員で
現在、仙台市産業振興事業団のプロジェクトマネージャーとして
活躍されている方です。僕は一度、仙台市産業振興事業団の主催する
セミナーで、谷村さんの講義を受けた事がありますが
とてもアクティブで気さくな方でした。谷村さんと飲んでみたい……。
読者の方で谷村さんにツテのある方がおりましたらご連絡を)

僕はかつて、卵のなかみ、で、テレビをこっぴどく批判していて
長らく一人で、テレビ不視聴運動、を繰り広げていたのですが
昨年暮れ辺りに和解しまして、たまにテレビを見るようになっていたのです。
しかし今回の、納豆狂想曲、で、やらせ、捏造、その他
特集という名の見えない広告の問題などが表に出てきて
再びテレビ不視聴運動を始めなくてはいけないのかな……などと
考え込んでしまいました。

先日、テレビっ子のとある女性から、しずちゃん知らないの? 
と聞かれたことがありまして、知らない、と答えたら、まるで異星人でも見るかのように
怪訝そうな顔をされて、僕は参ってしまったのですが
そういった共通の話題元としてのテレビの強制力は
一部では、いまだ非常に強いように思います。
その話題を知らないと、仲間外れにされたような気分になってしまうのが
テレビネタの恐ろしいところです。
そして日本社会は、山本七平氏の説くように、空気(ニューマ)が支配する
日本教、の世界。テレビ、というマスメディアは、日本教の要素を
強化する役割を果たしていたのかもしれません。
でもその、テレビジョン、が、最近何だかおかしい。
ともかく不祥事続きです。やらせ、データ捏造、視聴率買収……etc.

閑話休題。
グーデンベルグの活版印刷技術は、公衆、を創造し
テレビジョンは、大衆、を創造したと言われますが
果たして現在のIT革命、それに続く、WEB2.0、と総称される
技術革新やパラダイムシフトは、いったい何を社会にもたらすのでしょうか。
僕は今のところ分かりませんが、テレビと大衆
工業化と企画大量生産によるところの20世紀後半の世界観が
音を立てて崩れてきているのは、間違いないような気がします。

僕は2011年のアナログ放送終了と共に
テレビ時代は幕を降ろすのではないか、という予感がしています。
地デジで月9、であるとか、地デジマン、といった
最近のテレビ業界の、非常に苦しい地上デジタル波への
乗り換えキャンペーンを見ていると、僕はそんな気がするのです。
蛍の光、窓の雪……テレビ時代が去って行く。

最後の護送船団、平成の戦艦大和、沈み行くタイタニック号……。
2011年のアナログ放送終了を待たずに、在京キー局を中心とした
テレビ業界のビジネスモデルは、早晩、崩壊してしまうのではないだろうか。
僕は、あるある大辞典2、の放送に端を発した
正月明けの、列島納豆狂想曲、を見ていて、そんな事を思ったのでした。

参考までに、僕がテレビ批判三部作、トリオ・ザ・ファンクとして
お勧めする三冊の本を以下にリンクしておきます。
どの本も、新たな視点を与えてくれる良書です。
CM化するニッポン―なぜテレビが面白くなくなったのか

ご臨終メディア―質問しないマスコミと一人で考えない日本人 (集英社新書)

電波利権 (新潮新書)





僕は子供の頃からテレビがあまり好きではありませんでしたが
そのテレビの時代が、今まさに幕を降ろそうとしているのを見ていて
何だか複雑な思いです。テレビ黄金時代を微かに記憶しているので
無常観を感じてしまうのです。

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす。
おごれる人も久しからず
ただ春の夜の夢の如し
たけき者も遂には滅びぬ
偏に風の前の塵に同じ。

by 平家物語

本当に、諸行は無常で、盛者必衰。
ただ春の夜の夢の如し……と思ってしまいます。なんとも言えません。
テレビという巨大な怪獣が、断末魔の叫びをあげながら
のた打ち回り、滅んでいこうとしています。たけき者も遂には滅びぬ……。

ゆく河の流れは絶えずして
しかももとに水にあらず。
よどみに浮かぶうたかたは
かつ消え、かつ結びて
久しくとどまりたる例なし
世の中にある人と栖と、またかくのごとし

by 鴨野長明「方丈記」

世の中にある人とメディアも、またかくの如し……
といったところでしょうか。
嗚呼、テレビ時代が去っていく……。


―納豆狂想曲を見て、テレビ時代の終焉を思ふ(完)―


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