2004年2月1日日曜日

ヤバいの逆転(3)一身独立して一国独立す 2004.2.X 初出

社会的連帯感はもちろん大切ですが
尊重すべき独立した人格をもった一人一人が
連帯感をつくりあげていくべきであって
まず連帯ありきでは、全体主義国家、になってしまいます。

実際戦後の日本社会は、唯一成功した社会主義国、と
揶揄されるほど連帯感だけは強かったような気がします。
それが現在壊れ始めていて、精神に異常をきたす人が
増えているように思ってしまいます。

これが意外な事に、明治・大正には
健全な実力社会、があったようなのです。
明治のオピニオンリーダー、福沢諭吉は
一身独立して一国独立す、と唱えましたが
現在求められているのは
一身独立して一国独立す、という
健全な明治精神、ではないかと思ってしまいます。

日露戦争あたりまでの日本社会は
案外まともだった、と主張する方は多いものですが
いったいこの国は、どこでどう道を誤って
しまったのだろう、と思ってしまいます。
一身独立して一国独立す、どころか
精神的・経済的に自立しようとすると
みんなと一緒になろうとしない
宇宙人、となってしまいます。

たぶん、他者性、宇宙人性、は
これから日本社会での
コミュニケーションを考える上で
結構重要な概念になると思います。

今までは、社会の敷いたレール、に乗って
みんな一緒だよね、とやっていた人達が
みんなと一緒になろうとしない人達を
ヤバい人、として排除していましたが
これからは、社会のレールに乗ったままで
他者性を獲得できていない人達が
逆に、話の通じない、ヤバい人、という事に
なるような気がするのですがどうでしょう。
価値観の180度の転換が起きているような気がします。

村上龍さんは、社会の敷いたレール、に乗っている人達の
特徴として、対象を一括りにする、という点を
上げています。
つまり、サラリーマンは、OLは
学生は、関西の人は、女子高生は
団塊の世代の人達は、といった形で
対象を、一括り、にするのだというのです。
確かにそういった、あるカテゴリー、に
属する人達の共通項は、昔に比べて
かなり少なくなってきています。

僕も、女子高生は、とか、団塊の世代の人達は
と、時々書いてしまうのですが
じゃあ他に適切な言葉があるのか、と言ったら
これが、ない、わけです。
これは大変な事だなと思ってしまいます。
話通じねえよ、と日本中で悲鳴が上がっているような
気がしてしまいます。

みんな一緒だよね、という形でしか
コミュニケーションできない
普通の日本人、による悲劇が頻発して
いるような気がしてなりません。
言葉の発明が求められているような気が
してしまいます。

ちなみに、春闘賃上げ交渉、は
春季労使交渉、になったようです。

春闘賃上げ交渉、という言葉には
闘い、を思わせる、激しい労使対立、であるとか
経営側に要求を突きつける事で
給料は、右肩上がり、にずっと上昇していくのだ
というニュアンスが含まれていますが
春季労使交渉、には
闘い、や、右肩上がり、のニュアンスが
ありません。

中々上手いネーミングだな、と思ってしまいます。
誰が考えたのだろう……。



-ヤバいの逆転(4)脳天気だ、へ続く-
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学問のすすめほか (中公クラシックス)