2004年3月1日月曜日

オリンピック(2)精霊の王 2004.3.X 初出

いつの頃からか、国際大会に出場する選手達は
楽しんできます、とインタビューで
答えるようになりました。

国費で楽しんできますとは何事か
これだから今の若い人達は、と
年配の方の中には怒りを覚える方も
多いかもしれませんが
メンタルトレーニングの理論の中には
プレッシャーを楽しめる精神状態に
至った時、その選手は最大のパフォーマンスを
発揮できる、という考え方もあるようなので
あながちインタビューで
楽しんできます、と答える選手達が
悪いとは言えないと思ってしまいます。

僕がバスケットボールの大会に出場した時も
最高の結果を出せたのは
怒りや不安、ビビり、といったネガティブな
精神状態を通り越し
チャレンジするんだ、という、挑戦、の段階を経て
無心の境地、に至った時だったように
思います。

斬りむすぶ、太刀の先こそ地獄なれ
たんだ踏み込め、先は極楽 

そういった精神段階に至ると
バスケットボールが、止まって見える、わけです。
その段階に至れば
目を瞑っていても、シュートを外しませんし
コートのどの辺りに、どの選手がいて
次にどこへ動いていくのか、というのも
手に取るように分かるようになるわけです。

そういった精神状態を仏教的に表現すれば
阿頼耶識(アラヤシキ)が
異常に活性化された状態、という事になるかと
思います。
俗に言う、第7感、とか、第8感、とか
女の直感、とか呼ばれる人智を超えた
サムシング・グレイト、と繋がっている状態
です。

スポーツ解説者などは、そういった精神状態にある
選手を、奴はゾーンに入っている、と
表現したりします。

野球選手なども、所謂、ゾーンに入り
絶好調、の段階に至ると
140キロのスピードボールでも、止まって見えて
その、縫い目が見える、とさえ言われています。

ちなみにバスケットコートには
確か、ビッグ・モー? と呼ばれる
コートの神様、が住んでいると言われて
いたように思います。
この、コートの神様、を味方につければ
バスケットコートを完全に支配できるわけです。

NBAのマイケル・ジョーダンは、最盛期
完全にゲームを支配する、神様、の如くプレイして
いましたが
きっと、バスケットコートの神様
ビッグ・モー、を味方につけたのだと
思います。

フロイトの潜在意識の理論を
発展的に継承しようとした
カール・グスタフ・ユングは
人間の無意識の奥底には
高い洞察、を表す、老賢者、が住んでいる、と
指摘していた事があります。
(河出書房新社、人間と象徴、下巻、70ページ)

僕は、バスケットコートに住むと言われる
ビッグ・モー、という神様も
ユングの言う、深層意識下の
老賢者、のようなものではないかと
思ってしまいます。

中沢新一さんという、現代日本で
おそらく最も元気のある学者先生が
最新作、精霊の王、という著作において
神社で行われる、申楽、を通して
所謂、ゾーン、に入る、翁、について
書いていました。

帯に、日本人の精神史をくつがえす!
と過激なメッセージがありましたが
あながち大袈裟な表現ではないと思って
しまいます。
時代が時代なら、発禁本、です。
この本は、多くの日本人、特に、東北人、にとって
精神史をくつがえされるかのような
衝撃の書、となるかと思います。

神社の、石、についても
かなり踏み込んで書いてありました。

あまりに衝撃的な本なので
紹介してよいのかな、と
躊躇してしまいますが
これは凄い本です。

精霊の王 中沢新一 講談社




-オリンピック(3)冷戦の終了、へ続く-
http://digifactory-neo.blogspot.jp/2012/09/320043.html

精霊の王

人間と象徴 上巻―無意識の世界

人間と象徴 下巻―無意識の世界

マンガユング「心の深層」の構造―全生涯とその分析心理学 (Kodansha sophia books)