2003年11月1日土曜日

新嘗祭 2003.11.X 初出

今日は、勤労感謝の日、です。
三連休で笑いが止まらない、という方も
多いかと思います。

勤労感謝の日。
戦後、アメリカ合衆国の、labor thanksgiving day、を
参考にして、11月23日を、勤労感謝の日、としたようですが、
実はこの日は、宮中で行われる
新嘗祭(にいなめさい)の日でもあります。

新嘗祭(にいなめさい)というのは
その年の新穀を神に供えて祭り
神と供に天皇陛下が新穀を食する
つまり、嘗(な)める、日なのです。
だから、新嘗祭(にいなめさい)と言う。

明治の近代化で太陰太陽暦から太陽暦に暦を改めても
戦後アメリカ合衆国の占領を受けても
新嘗祭、を、さり気に、勤労感謝の日、として残してある。
心ある人がいたものだと思います。

日本人は弥生時代から農耕を行ってきたわけです。
日本酒考、にも書きましたが、その民族の特性は
食物に最も顕著に現れます。
つまり食物は民族の精神性にまで影響を与えるわけです。
だから日本人にとって、新嘗祭、は
とても大切だと僕は思います。

こういう事を考えると、経済の自由化交渉の席などで
世界中で農業分野の交渉が滞ってしまうのも理解できます。
食物の中でも特に主食となる穀物は
その国の文化と密接に繋がっているからです。
経済学の、比較優位、の原則に基づいて
日本よりタイの方が米を安く作れるのだから
日本は農業を辞めた方がいいのではないか、という議論では
どうしても済まされない部分があります。
西洋文化をいくら受け入れても
ほとんどの日本人は、ご飯、だけは捨てられないはずです。
僕の周りにも、パン食ではどうも気合が入らない、とか
ナンカレーが毎日ではちょっと、とか
ご飯を食べないと食事をとった気がしない、という
人は多いです。結構若い人にも。
そして、新米、には、今もブランドとしての価値があります。

先日、偽の新米表示が増えているらしい、という
ニュースがありましたが、新米、にブランドとしての
価値があることの証です。
偽グッチが増えているのと同じ心理だと思って
しまいます。

日本では新入社員を、新米、と言ったりしますが
おそらく炭水化物を小麦から採っている文化圏には
新入社員をさす、新米、にあたる言葉はないはずです。
フレッシュマン?
最近は、新米、を、フレッシュマン、と言うように
なりましたね。フレッシャーズフェア、とか。
新米商機、ではだめなのでしょうか。

少々話が逸れてしまいましたが
今日は勤労感謝の日であると同時に
新嘗祭の日でもあるのですよ、という話なのです。

近代の科学教は、ビタミンCの多い食物と
ビタミンAの多い食物の組み合わせが
どうこう、というレベルから
ついに、ビタミン自体をサプリメントで摂る、という
段階にきてしまいましたが
以前も書きましたように
科学は、ものごとの仕組み、を教えてくれても
その意味、は与えてくれません。
でも人類は、高度に発達した脳、や
もの思う心、を与えられています。
科学的に人体によい栄養素を採っているだけでは
心は満たされないような気がします。

あまりに栄養学的に偏った食事もどうかと
思いますが、栄養素ばかり気にして食べていて
そんなに、美味い、のでしょうか。
ビタミンCはストレスから人体を守ってくれるから
ビタミンCのタブレットを採る、と言う前に
そのストレスの対象をどうにかして
取り除くのが先ではないかと思うのですが
現代では、ビタミンCのタブレット、が
先に来てしまうのです。
それは昔の人が、ここの神社のお守りは学業にいい、とか、
ここの神社のお守りは交通安全にいい、と思っていたのと
同じ心理ではないかと思ってしまいます。
まさに科学教。

太陽の恵み、と、農家のみなさん、に感謝して
ふっくら炊けた新米を食べてみる。新嘗祭。
とてもいいではないか。新嘗祭。
せめて今日だけは、ビタミンの話、は忘れましょう。
今日は、新嘗祭、の日です。

♂♀生・性・聖、そしてその土地の風土が
文化を決定づけるような気がする。


-新嘗祭-