2003年8月1日金曜日

水の話(4)宗教と水 2003.8.X 初出

♂♀生・性・聖のエッセイにも書きましたが
世界宗教足りえて長く続いてきた宗教には
ある種の共通性があるはずだ、と僕は
考えているわけです。
で、今回は水の話という事で
水についての共通項を探ってみたわけであります。

まずユダヤ教。
ユダヤ教の聖典である旧約聖書は
臨在の幕屋(主がおられるところ)に近づく際
洗盤の、水、によって手足を洗い清めなさい、と
定めています。
で、キリスト教。
キリスト教の聖典である新約聖書においては何度も、
水、によって洗礼(バプテスマ)を授ける、と
いう記述が出てきます。
キリスト教はユダヤ教の一派から出た宗教なので
まあその辺は理解できるところです。
では僕が最近探っている神道ではどうなのだろう。
日本の神社では参拝する際
拝殿の前にある手水舎(ちょうずや、てみずや、
おみずや)のきれいな水で、禊(みそぎ)という
祓(はらい)を行って日常生活での穢れ(けがれ)を
清めるようです。

臨在の幕屋、に行く前に、洗盤の水、で
手足を洗い清めなさい、というユダヤ教と、
拝殿、に行く前に、手水舎の水、で
穢れを清めなさい、という神道の発想はよく似ているな、と
僕は今回発見しました。
地球の状態も人体の状態も動植物の状態も
水によって保たれているのだ、という事を考えると、
♂♀生・性・聖、そしてその土地の
風土から生まれてくる、宗教、に、水、が何らかの形で
取り込まれているのは極めて自然な事なのかも
しれません。

そもそも現在の地球上の全ての生物は
太古の昔、海、つまり水の中にいた、というのが
現在の定説です。
地球に水があったから生物が誕生した、とも
言えるわけなので、地球の状態も人体の状態も
動植物の状態も、水、によって保たれているのは
当然のことなのでしょう。

でも、宗教、を必要とするのは
地球上のあらゆる生物のうちで人類だけです。
それは何故か?
たぶんそれは、人類には高度に発達した脳があるからでしょう。
で、その人類の高度に発達した脳が編み出してきた宗教が
ささいな教義の違いをめぐって血で血を洗う戦争を繰り広げる。
何故なのだろう……。
ハンティングを宿命ずけられたライオンさんやトラさんでも
必要以上の殺戮は行わないのに
高度に発達した脳を持つ人類が
とんでもない規模で同胞殺しを行う。
何故なのだろう……。
植物さん達は物言わずせっせと光合成を行って
二酸化炭素から酸素ガスを抽出して
太陽の強烈な紫外線から地球上の全ての生物を
守ってくれるオゾン層を形成してくれているのに
これまた高度に発達した脳を持つ人類が
そのオゾン層を破壊する。
人類は密室で七輪を焚いて自殺したり
真冬にストーブを焚いたまま眠って死んだりして
酸素の重要さを脳では理解してはいるはずなのに、
オゾン層を壊しても案外平気だったりする。
何故なのだろう……。
物言わずせっせと光合成を行って酸素ガスを
提供してくれている植物さん達の方が
人類よりも余程偉い存在なのではないのだろうか、と
僕は思ったりします。
極論すれば人類の、知性、が諸悪の根源なのでは
ないのか、などとも。
そういう事を教えるために
造物主(いるとしたら)は、一定の割合で人類に
知的障害者が発生するように設定したのかな、などと
考えてしまいます。

僕は宗教の事を考えるといつも知的障害者の存在に
行き着きます。
人類は高度に発達した脳を持っているので
どうしても、この世界とは何か、人生とは何か
愛とは何か、死とは何か、神とは何か、といった
形而上学(けいじじょうがく)を必要とします。
でもたぶん知的障害者は形而上学を必要としないのでは
ないか、と僕は思うわけです。
人類の、知性、が諸悪の根源なのだ、という先ほどの
極論めいた仮定に照らして考えてみれば
人類の中で唯一罪のない存在は
知的障害者と呼ばれる人達なのではないか、と。
本当に彼らは障害者なのだろうか。
もしかしたら障害者は知性を抱えた
僕達の方なのではないか、とさえも。

昔の人達が知的障害者を聖人視していたのはきっと
その辺に理由があるのだな、と僕は今思いました。
聖者の行進、というテレビドラマが何年か前に
ありましたが、そのドラマは施設に暮らす
知的障害者達の話でした。
人類の諸悪の根源である知性を持たない知的障害者達。
彼らはやはり聖者なのかもしれない。

仙台市内のクリスロード商店街にある三瀧山不動院には
仙台四郎さん、という神様が祭られています。
四郎さんは江戸末期から明治にかけて
仙台に実在した人物で、言葉を話せない
今で言えば知的障害者と呼ばれる人だったらしいです。

四郎さんが街を徘徊していてフラリと
立ち寄った店は必ず繁盛したとの事。
何かありそうです。





-水の話(5)へ続く-
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