2003年5月1日木曜日

マイチェア・マイブーム 2003.5.X 初出

団塊の世代の人々は、とひとくくりに
してはいけないのでしょうが
総じて団塊の世代の人に聞くと
このコートは五万円のコートだから
いいコートだ、このスーツは10万円の
スーツだからいいスーツだ
この靴は三万円の靴だからいい靴だ
という言い方をします。
或いは自慢の一品を見せて
いくらすると思う? と聞く。
僕はそういった消費行動が
過去のものになってしまったような気がします。

僕はバイク乗りなので、ちょっとバイク業界の
事を考えてみても、自分流にカスタムする、という
売り方が増えてきたような気がします。
ホンダのスーパーカブをかわいくカスタムして
乗りこなす女の子をよく見かけますが
ホンダのスーパーカブと言えば、かつては
燃費がよくて壊れない、寿司やラーメンの
出前用のバイクだったのです。
それを若い女の子に売ってしまうのだから
ホンダの感性は凄い。
モッズ系ファッションでべスパに乗る子も
見かけますが、べスパのカスタムショップも
五橋あたりにあると聞いた事があります。
きっとそういう子達は
このバイクいくらすると思う? とは
聞かないような気がします。
このシートかわいいでしょ? とか
ここのランプ小さくしたんだけど
どう? と聞くはずです。

消費行動において
価格が価値判断の基準ではなくなって
きているように思います。

センスとか、気分とか、自分に似合うかどうか、が
重要で、十万円のコートだろうが、300万円の
バイクだろうが、自分に合わなければ要らない、と
なってきているように思います。
僕はそれは進歩のような気がします。
バブルの頃は、大手のアパレル会社が今年の流行色は
青です、と仕掛けると、街は青一色に染まったらしい、です。
僕はそういうのが凄く苦手だったので
僕的には好ましい変化だな、と思ってます。

で、先日友人と話をしていて
最近、椅子流行ってるよね、という
話になったのですが
何で椅子? という話が例によって
取っ組合いの激論になってしまい
腕っぷしの弱い僕は
友情の拳を受けて腫れ上がった頬を
押さえながら思ったのです。
そんなに高い椅子でもないし……
デザインとか雰囲気で選んでるようだし……
あれもマイブーム志向の流れなのかな、と。

僕は綺麗な木目の座椅子に座り
ベージュの座布団を敷いて
この原稿を書いています。

マイチェア・マイブーム