2003年5月1日木曜日

ムエスリ 2003.5.X 初出

神様っているんだね。

青葉通りの一角、僕の秘密の喫茶店。
ダイアナ妃も好んで食べたと言われる
スイス料理ムエスリ(ナッツ入りヨーグルト)を
作りながら、カウンター向こうのY子さんはそう答えた。

僕はムエスリを頼んだ格好いい自分に満足しながら
何気に、SARS怖いですね、と聞いてみたのだ。

神様っているんだね。
Y子さんはそう答えた。
そんなセリフが似合う女性は素敵だと僕は思った。
Y子さんはきれいな手の持ち主で、手タレになれる、と
よく言われるらしい。

神様っているんだね。
Y子さんの言う事にも妙なリアリテイ―がある、と僕は
思った。
9.11テロから、アフガニスタン、イラクと戦争は続き
アメリカ政府のネオコンと呼ばれる人達は
次はシリアだ、北朝鮮だ、と物騒な事を考えて
いるらしい。
このタイミングでSARSが出てくるというのは
造物主の怒りに触れたのだ、とも思えてしまう。
第一次大戦の時はペストが流行したという話もある。

神様っているんだね。
気の弱い僕はY子さんのきれいな手の効果もあって
うなずく事しかできなかったのだが
神様っているのだろうか……
SARSと戦争を、造物主の意思に結びつけて考えているのは
人間の脳なのではないだろうか。
知的障害者は神を思う事があるのだろうか。
それは僕の小説のテーマの一つでもあるので
この辺にしておきますが、ほんとSARS怖いです。
知り合いが台湾支社に勤務しているので心配だ、と
言っている友人もいました。

Y子さんがそのきれいな手でムエスリを運んできて
くれた。僕は神に感謝をささげ、ムエスリを食べる。