2003年5月1日木曜日

友がみな、我より偉く見ゆる日よ 2003.5.X 初出

花を買い来て、妻とたしなむ。

というわけで僕は花を買って来てみた。
花ってなんだろう。
ネアンデルタール人も死者に花を
ささげる習慣があったらしいと言われている。
人間はなんでそんなに花が好きなのだろう。
特に女性は本当に花が好きだ。
花をもらって嬉しくない女性はいないとも
よく言われる。
最近ではそれはジェンダー差別だ
と言って非難されるかもしれないが。
味気ない事を……。

広い宇宙があって
その中の一つに人間の住む地球があって
そこには花があって
人間は花を美しいと思った。
そこには普遍的な何かがあるような気がする。

アスファルトで地面は覆いつくされ
高層ビルの乱立で空は四角に切り取られ
スモッグで覆われた夜空は、星の輝きを失ってしまった。
それが近代化の行きつく先で、僕たちはそういう社会を
目指してきたのだからしょうがないとは思う。
僕もそういった近代都市で活躍する自分を
格好いいと思い、土臭い田舎をバカにして
生きてきた。

近代合理主義というものは確かに効率的ではあるが
社会からいろいろなものが失われていくような気がする。
天文学の発達は、星の神話を無化してしまったし
DNA研究の発達は、輪廻転生の物語も
無化してしまいそうな勢いだ。
かつて夏目漱石が書いた、知に働けば角が立ち
情にさおせば流される。
近代合理主義と、失われていくサムシンググレイトとの
中で引き裂かれそうな人間性の、究極の言葉だ。
その失われたサムシンググレイトを
花は、思い出させてくれるような気がする。

極度のストレスで、狂暴化してしまいがちな現代人。
でも人間本来の姿はそんなものではないような気がする。

友がみな 我より偉く見ゆる日よ
花を買い来て 妻とたしなむ 
            石川 啄木