2003年5月1日木曜日

沖縄考 2003.5.X 初出

内地の人はそういうけどね
本当はそういうもんじゃないんだよ!
タクシーの運転手にいきなり
僕は怒られてしまった。

ゴーヤチャンプル、泡盛、テンプル
シーサー、シーカーサージュース……蒼い海、沖縄!
と完全に観光気分だった僕は
いきなり現実に引き戻されてしまった。
そう、僕は小説の取材のために沖縄にきていたのだった。

村上龍さんが、基地の町でファントムの爆音を毎日
聞いている子供達は、誰が強者か知っている、と書いて
いましたが、沖縄にくると本当にその言葉の意味を
実感します。

英語で放送されるラジオ番組
米軍の払い下げ品をアーミー系ファッションとして
売り出すショップ
ドル表示の中古自動車販売店

そう、強者はアメリカで
日本自体がアメリカの基地になっていたのです。
ちなみに沖縄で基地が占める土地面積の割合は18%です。

そのタクシーの運転手は僕が小説を書いていると言ったら
ますます冗長になり、内地の人は基地返還問題を
ああだこうだ言うけど、あれは借りた貸したの
問題じゃないんだ。戦争の混乱の中で
米軍が沖縄の一番いい土地を無理やりぶん取って
基地を建ててしまったんだ。
内地の人間はそれが分かってない。
分かってくれるのは筑紫哲也さんだけだ、とまくし立てた。

どうして突然、筑紫哲也か、と僕は思ったが
ニュース23でおなじみの筑紫哲也さんは
朝日の沖縄支局にいたことがあるらしく
その運転手の言い方には、ちょっと尊敬のニュアンスが含まれていた。

筑紫さんの出ているニュース23を
ほとんど視ていない上に
話題になっている内地の人間でもあり
さらに気の弱い人間でもある僕は
反論することもできずに聞き役に徹していた。

沖縄では何度か、内地という言葉を聞いた。
アイデンテイテイ―として
本土と沖縄を分けて考えているのだと思った。

沖縄ロック、沖縄料理
沖縄アクターズスクール、沖スロ……
と、何かと輝いているように見える沖縄だが
足元を見れば失業率日本一。
その根底にはある種の哀しみがあるような気がした。

タクシーの運転手に怒られて
小説の取材で沖縄に来ていた事を思い出した僕は
勇気を出して、取材対象である
沖縄に今も残るシャーマニズム
ユタ、ノロ
について聞いてみた。

運転手はますます冗長に
ユタとノロについて語ってくれた。