2003年7月1日火曜日

怪獣考-やはり芥川龍之介は凄い- 2003.7.X 初出

中国と韓国の国境の湖で約20頭の怪獣が
目撃されました、というニュースが最近ありました。
複数の観光客が目撃したそうです。
一部では、ドラゴンではないか、と
盛り上がっています。
ちなみにネス湖のネッシーは嘘だったという話です。
さて今回は本物なのだろうか。
僕はちょっと興味があります。

僕の友人に、UFOを見た、と言って
譲らない人がいるのですが
僕が、嘘だろう、と言うと
ホントだって、一緒にいた友人も
見たんだから、と言い張ります。
一緒にいた友人も見たんだから、という
ところに妙な説得力があります。

怪獣にしてもUFOにしても
そういった怪異なものを複数の人が同時に見ると
いう体験とは何なのだろう。
きっと当事者達にとっては事実なのだろう、と
僕は思います。
だって見たのは自分一人ではないという事なのだから。
でも何か腑に落ちません。
何だろう、何だろう……と考えた僕は
芥川龍之介の、その名も、竜、という短編を思い出しました。

ある法師が、○月○日に湖から竜が昇る、と
ホラを吹いて湖の前に立て札を立ててみたところ
無知で無垢な村の衆がそれを信じてしまい、竜が
昇る、というその日に湖の周りに多くの人が集まって
しまった、という話。そして、竜が昇る、とホラを仕込んだ
当の法師も今さらホラだとも言えなくて
湖の周りの様子を見ていたところ
突然雨が降り始め、神鳴りが落ち、どうしたと
思ったところ、湖から竜が現れ、天空に昇って
いってしまったとの事。そして、竜が昇る、という
ホラを仕込んだ法師もぶったまげたとさ、という話。

芥川自身は駄作だとしていたようですが
僕はそんなことはないのでは、と今思いました。
UFO問題やネッシー問題の本質が
よく表れている普遍的な小説のように思います。
芥川龍之介は大正時代に既に
UFO問題もネッシー問題も
予見していたのではないか、と。
やはり芥川龍之介は凄い、と
僕は思いました。

怪獣、いたりして。


怪獣考-やはり芥川龍之介は凄い-