2003年7月1日火曜日

文系人間による数学講座(5)円周率 π 2003.7.X 初出

ゆとり教育の導入で円周率3.14が、3、に
なりますというニュースが報道されて
そんな事ではこの国は知的に滅びてしまうのでは
ないか、と多くの学識経験者が口角泡を飛ばしていた
時期がありましたが
ほとんどの人にとっては、そういえば円周率なんて
あったねえ、と思い出したくらいでは
ないでしょうか。

中学・高校とも偏差値25で
五段階評価オール2だった僕は
偏差値教育もゆとり教育も
勝手にしてくれ、という感じです。
でも円周率に関してはちょっと譲れないものがあります。

円周率3.141592……これは僕の想像力を
非常に刺激するのです。
円周率は3.141592……と、みんながどこまで
言えるか暗記力を競うことでも分かるように
どこまでも続いていきます。循環していく循環数です。
スーパーコンピューターに計算させたら
一兆二千億桁まで行ったとかいかないとかの
話もありましたが
文系人間である僕にとっては
そんな事はどうでもよくて
要は円を支配するキーとなる数字が
循環数であるという事が気になって仕方がないのです。

半径×半径×π=円の面積
だったと思うのですが
πが正確な値を取れないと
いう事は、円の面積は正確には求められない。
球体の体積もまた正確には求められないという事なのではないでしょうか。
半径×半径×半径×π×4/3が球体の体積で
いいのでしょうか(今ネットで調べました)
ここまでくると文系人間の僕は
頭が痛くなってきますが
要は球体の体積も正確には求められない。
つまり球体である地球の体積も理念上は求められないことになります。

近代以前の哲学者達にとって(近代以前は全ての学者は
哲学者だったらしい)円や球体というのは
きっと月や太陽を思わせる神秘的なものだったと
思います。地球が丸いと分かったのは
正史ではガリレオ・ガリレイからでしょうか。

で、円周率の哲学者と言えば
ピュタゴラスの定理で有名な
ピュタゴラスです。
ピュタゴラスは数学者、哲学者であると
同時に、ピュタゴラス教団の開祖でもあり
デルフォイにいたガイアの子である大蛇、ピュトンを信奉していました。
ピュトン、つまりπです。

ガイア(地球)の子である大蛇(π)を信奉する。

僕はここが気になって仕方がないのです。
球体の体積を支配しているのは円周率、π。
それで球体であるガイア(地球)の子が大蛇ピュトン(π)。

僕は小説を書くために蛇に関する資料を
結構収集したのですが(小説を書こうと
言うのはやはり業深い行為ですね)
以下、何個が列挙してみたいと思います。

聖書、創世記においては
主なる神が造られた野の生き物のうちで
最も賢いのは蛇であった、とします。
そして蛇にそそのかされたイブが
食べていけないとされる木の実を食べることで
人類は堕落した、と。
逆にグノーシス派(キリスト教異端派? )は
人類を無知の状態に置こうとする
暴君的な神の意思に対して
人類に知恵という光をもたらしたという理由で
エデンの園の蛇を礼賛しています。
さらにグノーシス派は蛇とイエスを同一視していて
蛇はメシアであるとします。

一部のキリスト教徒達は
蛇はイエスの父であり
処女マリアのベッドを襲って
救世主を懐胎させたと信じていたそうです。

魔術パピルス写本によれば
蛇は世界の支配者
大いなる蛇
神々の指導者
神の中の神

ヴェーダによれば
蛇は天地創造の時
子宮の深淵をかき回した男根神であるという。

ヤハウェ信仰(ユダヤ教のあれするな、これするなという
おっかない唯一絶対神信仰)が起こるずっと以前に
パレスチナでは、蛇が崇拝されていた。

ユダヤ教の祭司族であるレビ族は
大いなる蛇の息子達、の意味。
すなわちLeviathan
うごめく者の息子達の意味。

世界各地に多く残るドラゴン伝説は
これは巨大な蛇のことであると
考えられる。

以上、僕が小説を書くために集めた
蛇に関する資料です。
ピュタゴラス教団の、π=蛇、であるという事を
照らし合わせるとこうなります。

円周率π=蛇=ピュトン=ドラゴン=世界の指導者
=イエスの父=天地創造のきっかけ=神々の指導者
=神の中の神

文系人間の僕は、それは地球という球体が蛇(π)に
よって支配されている、という事ではないかと思ったのです。
これはえらい事ではないでしょうか。

今回の文系人間による数学講座シリーズで
大活躍しているアインシュタイン博士は
地球の自転が北極、南極の氷に
遠心力を加え、それが地殻変動を引き起こす可能性について考えていたそうです。
地殻変動が起こるとどうなるか
大陸が移動するのだから
大地震が起きて津波が起きる。
こりゃ大変だ。
で、大陸が動いてしまうほど遠心力が
激しくなれば、地球の自転だけでなく
地球の公転も狂い始める。
地球は自転しながら太陽の周りを
公転しているので、公転が狂い出せば
万有引力の法則にもとずいて
太陽や月の引力が地球に住む人々の
生活を壊し、気候も変えてしまう。

グレゴリオ暦などやめてしまえ、の
エッセイにも書きましたが
人類の営みなど
太陽系に異変が起これば
すぐ崩壊してしまうものです。

で、その地球の球体としての
動きを支配しているもの
これが、神秘的循環数、π、ピュトン、蛇、ドラゴン……なのでは
ないかなあ、などと僕は
ゆとり教育の導入で円周率3.14が、3、に
なりますというニュースを見て思ったわけです。

エデンの園でイブをそそのかした
蛇であるとか、世界各国のドラゴン伝説であるとかは
象徴に過ぎなくて
蛇やドラゴンというのは
球体としての地球を支配している
円周率πのことではないのかな、と。

ここまでくるとグラハム・ハンコック氏の
神々の指紋、シリーズのようにトンデモ話だ
と思われるかもしれませんが
小説家を目指すのであれば
トンデモパワーも鍛えておいて損はない、と思うので
突っ走ってみます。

世界中の洪水伝説の中に出てくる
伝説の大蛇、ヤーランガー、というのがいるのですが
これも実は円周率のことではないかと
思ったりします。
たいていそのヤーランガーという大蛇は
虹と関係するとされているのですが
虹は雨上がりの大空にサイケデリックな半円を作ります。
サイケデリックな半円。
つまりこれも半円なのでπがからんでくるはずです。
ヤーランガー(π)が、天空を駆け巡る時
地球は大変動に巻き込まれる。
それは、球体である地球は神秘的循環数、π、に
支配されているということではないか、と。

インディージョーンズの映画で有名な
失われたアーク、聖杯伝説がありますが
前述のグラハム・ハンコック氏の
神々の指紋シリーズを読んでいくと
欧米人は結構本気で聖杯やアークを探しているらしい
という事がわかります。
ナチスドイツは最終兵器としてのアークを
探して歩いたと言われています。

で、そのアークを探していたと言われる
テンプル騎士団という伝説の部隊が
世界史に登場しますが
そのテンプル騎士団のドンである、ベルナール氏は
神とは何か、という問いに対し
神とは、長さであり、幅であり、高さであり、深さである、と答えています。


というわけで文系人間による数学講座
5回ほど曲解と妄想も交えて
やってきたわけですが
いったい世界とは何だろう、宇宙とは
何だろう、人間とは何だろう、と
少年のようにピュアなハートを持ったまま
大人になってしまった僕は思うのであります。

きっと数学者は世界は数字でできていると
言うだろうし、脳科学者は脳でできていると
言うだろうし、仏教の唯識論では
心でできていると言う。
文系人間による数学講座、最終回は円周率、π、の
話でした。

と終わろうとしたところで僕はふと
πと言えば、ブルーハーツのキューティーパイだ!
と思い出してしまいました。
ちなみにブルーハーツというのは
80年代に一世を風靡したロックバンドです。
ブルーハーツのキューティーパイという曲は
3.141592、ああ、6535、キューティーパイ……と
なんと円周率44桁まで歌い続けるという
格好いい曲なのです。
僕は今まで格好いいけど変な曲だな、と思って
いたのですが
もしかして作詞の真島昌利さんは
地球を支配する神秘的循環数πのことを歌い上げて
いたのではないか、と想像して
僕は今ブルーハーツが怖くなりました。

円周率を44桁まで歌い上げるキューティーパイ。
英和辞典を引いてみると
キューティーには、かわいい、という意味の
他に、巧妙な策略、(敵の裏をかく)抜け目のない人、などの意味もあります。

キューティーパイ。
敵の裏をかく抜け目のない神秘的循環数、π。
キューティーパイ。
抜け目のない蛇。
π。

畏るべし、ブルーハーツ。


文系人間による数学講座(5)
円周率 π

神々の指紋 (上) (小学館文庫)

神々の指紋 (下) (小学館文庫)