2003年6月1日日曜日

グレゴリオ暦などやめてしまえ 2003.6.X 初出

ドッグイヤー。

2000年頃からよく、ドッグイヤー、という
言葉を聞くようになりました。
ちょうど犬の1年が人間の7年にあたる、だか
人間の7年が犬の1年にあたる、だかで
時代の変化がそれだけ速い、という例えなの
だと思います。
本当にここ5年くらいは
あらゆる事象が物凄いスピードで変化していて
先進国では人間の時間感覚も変わってしまった
ように思います。

とにかくあらゆる事象のスピードが速い。
気がついたらポケットベルはなくなっていたし
気がついたら時計からバケツから漫画から
何でも100円で買えるような店ができていたし
気がついたら金色やピンクの髪の人が増えていたし
気がついたらダンボールを敷いて公園に寝ている人が
増えていた。

気がついたら伝統の一戦がプロ野球巨人・阪神戦から
サッカー日本・韓国代表戦に変わっていたし
気がついたら終身雇用は終わっていたし
気がついたら有事法制は国会を通っていたし
気がついたらアフガニスタンの戦争も
イラクの戦争も終結していた。

IT業界では18ヶ月で
半導体の集積度が二倍になる、という
ムーアの法則がまだ継続中だという話だし
缶ジュース業界にいる知り合いに聞いた話では
ソフトドリンクの新製品は毎年
1000種類発売されているのに
一年後に継続販売されているのは
1パーセントだけなのだそうだ。

気がついたら光ファイバーサービスが始まって
いたし……気がついたら、気がついたら、と
あらゆる事象が物凄いスピードで
変化していて、もうヒューマンの限界を
超えているような気がします。
このスピードとカオスが支配する世界で
気が狂わないようにするためには
僕はもう、グレゴリオ暦をやめるしか
ないのではないかと思ったのです。

ドッグイヤーも終わって、今度はラットイヤーなどど
囁かれる現在、12ヶ月で1年などという
グレゴリオ暦的な時間軸で
悠長に生きていたら
時代に置いていかれてしまう……。

一年が7年のドッグイヤーなのだから
実際は7掛け計算で
グレゴリオ暦の12ヶ月を7年としなければ
ならないのだ。
そう捉えないともう時代についていけない。
そしてドッグイヤー用の新しいカレンダーを作ってしまう。
新しいカレンダーにおいては
グレゴリオ暦の1日が7日
グレゴリオ暦の7日が49日
グレゴリオ暦の1ヶ月が7ヶ月
グレゴリオ暦の2ヶ月が14ヶ月
グレゴリオ暦の6ヶ月が42ヶ月
グレゴリオ暦の12ヶ月が84ヶ月
84÷12=7でご名答。
ちょうどグレゴリオ暦の一年を
ドッグイヤー用に変換できたことになる。
これは結構、僕の生活実感にあったカレンダーです。
1日でかつての7日分の変化を感じるし
7日経つと、僕はかつての49日分くらいの変化を感じる。
1ヶ月経つとかつての7ヶ月分の変化を感じるし
それで一年経つと、僕はかつての7年分の変化を実感している。
このドッグイヤー用のカレンダーを発売すれば
結構売れると思うのですが、どうでしょう。
もう試作品はあるので、カレンダー業界の方で
興味のある方はぜひ連絡を下さい。
現在ラットイヤー用のカレンダーも開発中です。

閑話休題。
現在先進国で採用されている
グレゴリオ暦(太陽暦)というものは
地球の自転と公転と、太陽との位置関係とを
入念に計測し観測した結果割り出されているものです。
無限に広がる宇宙空間。
その中の太陽系の惑星の一つである蒼い地球に
住む人類は、宇宙のシンフォニーの一部から
時間観念を編み出したのです。
時間とは、とてもロマンチックなものです。
そう、時間の支配者は学校の先生や
部長や支店長ではなく
太陽と惑星の運行なのだ、というロマンチックな
言い方も成立しますし、その方がむしろ正確です。
太陽系に何か大きな異変がおきれば
人類の編み出したグレゴリオ暦もドッグイヤーも
ラットイヤーも変更も迫られるでしょう。

ちなみに日本では明治6年1月1日から
グレゴリオ暦(太陽暦)を採用したらしいです。
それ以前は太陰太陽暦で、月の満ち欠けをベースにした
暦だったらしい、との事。
満月の夜は交通事故が多いとか、女性の生理は
月の運行に影響されるとかの俗説がありますが
月はロマンチックというよりも
ルナティックな感じがします。
そして昔の日本人は一月ごとに
水無月、神無月、師走……など、とても詩的な名前を
つけていたそうです。

いずれにせよ人間は、広い宇宙の数ある一つである
太陽系のシンフォニーから、時間観念を
編み出した事で
誕生日をお祝いしたり
命日に線香を上げたりする事ができるようになりました。
また古いアルバムを見て感傷にふけったり
未来を夢見たりすることができるようになったのも
時間観念のおかげです。
時間とは、太陽系の惑星の運行と地球
そこ住む人類の知性と想像力によって
偶然生み出された奇跡の産物なのではないでしょうか。

時が単なる数字の羅列になってしまい
季節や惑星の運行に思いをはせるような
ものでもなくなり
犬の時間やネズミの時間に振り回されている現代人。
宇宙のシンフォニーに反した現代人が
精神を病みやすいのもよくわかる気がします。

もうグレゴリオ暦などやめてしまえ。