2003年6月1日日曜日

愛とは毎月の家賃7万円を払うこと 2003.6.X 初出

愛とは毎月の家賃7万円を払うこと。

景気のいいデザイナーさんであるT氏は
確かにそう言った。

僕は衝撃を受けた。

僕は国分町の某飲み屋に来ていた。
そこで、女をかこっている、という
景気のいいデザイナーさん、T氏と
知り合いになったのだが
T氏によれば、女への愛とは
毎月の家賃七万円を払うこと、らしいのだ。
できたら愛と金は分けて考えたいと思っていた
ウブな僕は、その発言に衝撃を受けたのだ。

昔、同情するなら金をくれ、というドラマの
台詞が物議をかもしたことがあって(イエナキコ? )
その時は僕も、なんたる事だ、と思ったものです。
でも何故か、どういうわけか、どういう巡り合わせか
僕は社会に出てから四回ほど、突然勤め先がなくなる、という事態に見舞われてしまい
その台詞の意味もなんとなく
分かるようになってしまいました。

突然勤め先がなくなる、おそらく現在日本中で
似たような事態が発生していると思うのですが
そうするとたいてい雇用主さんは
同情の言葉をかけてくれます。
でも、どんなに暖かい言葉をかけられようと
次の日から僕の生活費がなくなる事に
変わりはないわけです。
気の弱い僕はたいてい
有難うございました、と言って
辞めてしまうのですが
同情するなら金をくれ、と
毒づいてしまう人も中にはいるでしょう。
当然の事ですが、雇用主も従業員も
あまり気持ちのいいものではありません。

愛とは毎月の家賃7万円を払うこと。
ママさんがつくってくれる
美味しいあったか芋焼酎を飲みながら
景気のいいデザイナーさんで
女をかこっているというT氏は
確かにそう言いました。

口惜しいが真実かもしれない、と
僕は思いました。

誠実である、とか
真面目である、とか
優しい、とか
その人の人間性だけで愛する人を
守れる幸福な時代は終わったのかも
しれません。

金じゃないんだよ、というのは
失業率1%の、悪いことさえしなければ
誰でも人並の暮らしができる、という
旧社会の常識だったのでしょう。

嗚呼、なんたる事だ。
愛とは、毎月の家賃7万円を払うこと。