2003年6月1日日曜日

仙台高等裁判所 其の七 あまりに生々しいものを見せられると人は無口になる 2003.6.X 初出

裁判長に向かって左側から被告人が入廷してきました。
女性です。
しばらくすると向かって右側の検察官が罪状を
読み上げ始めました。
どうやら被告人の女性はヤ○ザな夫に振り回された
哀れな女性であったらしく、耐えかねた末に
夫が隠し持っていた拳銃で当の夫を撃ち殺して
しまったとの事。

裁判用の資料とはいえ、夫を撃ち殺した
様子が細部にわたって正確に、かつ生々しく 
読み上げられる様は、ちょっと参ってしまうものが
ありました。
しかもその容疑者であるとされる被告人が
目の前でうつむいているのです。
あまりに生々しいものを見せられると
きっと人間というのは沈黙してしまうの
でしょう。
法廷内は水を打ったように、そう、水を打ったように
静かでした。衣ずれの音さえ響いてしまうほどに。
僕も重苦しい空気に包まれた法廷内の
傍聴人の一人として言葉をなくして
聞き入っていました。

検察官の被告人への質問が始まりました。
被告人の女性への酷な質問が次々と
繰り出されます。
聞いているだけで僕は疲れてしまいましたが
それが終わると今度は被告人の弁護人による
質問が始まりました。
心なしか被告人の女性に有利な質問であった
ような気がします。

最後に裁判長が被告人に発言を促します。
被告人の女性は涙声で自分の窮状を訴えました。
情状酌量を狙って弁護士が仕組んだものかも
しれませんが、それでも聞いていてグッタリと
してしまうものでした。

最後に裁判長が判決の言い渡し日を
告げて閉廷しました。

最前列にいた各メディアの記者達が
編集部へ打電するためなのか
一斉に駆け出して廊下へ出て行きました。


-仙台高等裁判所、其の八、へ続く-
http://digifactory-neo.blogspot.jp/2003/06/20036_40.html